お薦め名画「エイリアン」
映画銀幕パークのジョージ松田です。
今回の御薦め名画は
エイリアン
です。
日本だと少し順番や時期がズレますが
アメリカでは1977年5月に、スターウォーズが公開され
未知との遭遇Close Encounters of the Third Kind
が、1977年11月に公開されます。
そこで起きたSF映画のブームに乗って
第3のSF映画が、1年半空いて公開されます。
それがSFホラーと言う新ジャンルを確立したエイリアンでした。
エイリアンとは、それまでは
ただの「宇宙人・異星人」の事を
言うワードでしたけども、この映画の
公開後は、エイリアン=この映画のキャラと
言う方が上になってしまいました。
■サルバドール・ダリの推薦したドラキュラ
このエイリアンと言う映画は、1も2も無く
「美術」が、全面的に大きな役割を果たした作品です。
エイリアンは、当初はメモリーという
宇宙船が未知の惑星に降り、乗組員が寄生され
体内から怪物が誕生するという概要で
ストーリーの骨格は出来ていました。
美術チームには宇宙船のデザインに
クリス・フォスが、コスチュームデザインに
ジャン・ジローが・・・
そしてサルバドール・ダリの推薦で
H・R・ギーガーが加わっていました。
ですが、この段階でコッブが書いた
エイリアンは、満足のいく宇宙人では
なく…企画や脚本は一時ストップします。
1978年2月に脚本のオバノンが、監督の
リドリー・スコットに、ダリの推薦で
加わっていたH・R・ギーガーの画集ネクロノミコンIVを見せます。
そこに描かれていた機械とも生物とも
見える存在の宇宙人にスコットは衝撃を受け
この映画は成功すると確信を抱きます。
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リドリー・スコットは、ギーガーと交渉を
開始、エイリアンが主演俳優だと高額な
デザイン料を要求したため、20世紀フォックス
と話し合いがもたれ契約が成立します。
H・R・ギーガーがメインスタッフに加わり
ギーガーは黒ずくめの服を着ていたため
一部のスタッフは「ドラキュラ伯爵」と
呼び、ギーガーの指揮する美術チームは
150人にもなる大所帯でモンスター部門として製作にあたります。
ギーガーは異星人側の遺棄船などのデザインも
を受け持つことになりますが、完璧主義者で
製作現場で度々スタッフと衝突し問題になり
20世紀フォックスはそれまでのギャラを支払い
ギーガーを1週間で解雇してしまいます。
ですが、ギーガーは自分がすぐに必要とされる
ことを予見しています。
それは的中し、指揮者のいない現場は迷走し
本来のデザインとは程遠いセットになって
いった事から、ギーガーの必要性を上層部も
認めざるを得ず、ギーガーは現場に復帰します。
このダリが推薦したドラキュラが現場に
居なければ、エイリアンは産まれてなかったと言えるエピソードです。
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■グレムリンとエイリアン
一方、脚本のダン・オバノンは、メモリー
(後のエイリアン)とは別の
グレムリンという脚本を手掛けていました。
これはスピルバーグのグレムリンでは無く
その前のトワイライトゾーンに近いのですが
東京から帰るB-17の中にグレムリンが侵入し
乗組員を一人、また一人と殺していき
怪物を倒さない限り乗組員は故郷へ帰れない
という、宇宙では無いですがエイリアンの
スジで、グレムリンを異星人の怪物に
発見するのは宇宙船ではなく、まだピラミッド
で、胞子ポッドから出てきた生体に襲われる
などの違いがありますけども、メモリーから
スタービーストへと変更され、宇宙的なSFホラーの
土台が、グレムリン(西洋の妖怪)から産まれています。
トワイライトゾーンや、スピルバーグの
ギズモのグレムリンは、直接は関係ありませんが
エイリアンのヒットで、このメイキングエピソードが
公開されたので、ジョージ・ミラーが
ヒントにしていても、不思議ではありません。
■SFホラー
アメリカでも、スター・ウォーズ後に
コロンビア映画の未知との遭遇が公開され
SF映画が、収益できる事や流れからも
観客がSF作品を求めている事が明確で
お蔵入り寸前だった、エイリアンは
SFで使えそうな眠った脚本の中から
スポットが当たり、製作にGPサインが出ました。
美術も少し揉めますが、ギーガーと言う
才能の御蔭で、他のSF作品とは被らない
SFホラージャンルが誕生すると共に
後々何十年も、大きな収益を産み続ける
エイリアンというキャラが、ギーガーの手で誕生します。
エイリアンスーツの製作はギーガー自身が
担当しますが、スーツは構想段階では半透明で
骨格や消化器官が透けて見える予定でしたが
試行錯誤が繰り返されたが、耐久性に問題が
あり、半透明の構想を断念しラテックスを用いることで誕生しています。
また内容も、続編を想定して無かったので
エイリアンの存在にリプリーは気付かず
(寄生した状態で)一緒に地球に帰還するか
エイリアンとともに宇宙の藻屑となるか
エイリアンを倒し地球に帰還するかで
選択を迷いますけども、SFホラーな内容
なので、ラストはハッキリしたモノが選択されます。
■まとめ
エイリアンは、日本では大きな扱いでは
無く、小さな劇場での公開で
一般的なテレビ番組などでは、紹介されない
マイナーなSF作品でした。
この頃は、日本もSFやロボット、宇宙船に
興味が注がれ、ドラえもんまでがテレビ朝日系
でアニメ化され放送が始ります。
シャープが6月に世界初のダブルラジカセを
発売し話題になると、翌月には世界が驚く
ソニーの「ウォークマン」が発売され
SFが現実とクロスする感覚を抱いていました。
今では、音楽を外で聴くのは当たり前すぎ
ますけども、当時は歩きながら外で音楽を
聴くと言う事は、考えられない未来の発想で
ドラえもんにも、それまで出てこないような未来の道具でした。
うまい棒が発売されたのも、この頃で
ある意味、未来的な食べ物で、不思議な食べ物で
警戒されつつ…子供に人気になっていきます。
世界中が、日本のSONYにブラボーの声を上げた
時期に、やや地味~に公開されたエイリアンは
SFファンに、徐々に受け専門誌などに
取り上げられるようになると、少数のフィギュア
などが造られるようになります。
こうして、エイリアンはキャラ先行で認知
されて行きます。
今、見るとSFの世界感やスケールも、特撮も
劣るところは多いのですが、ギーガー自身が
製作したエイリアンや、そのセットは続編や
CG時代の今でも、敵わない存在感や生命感があるので
未見の方は、是非見て観てください。
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■作品データ
監督 リドリー・スコット
脚本 ダン・オバノン原案
ダン・オバノン
ロナルド・シャセット製作
ゴードン・キャロル
デヴィッド・ガイラー
ウォルター・ヒル
製作総指揮
ロナルド・シャセット音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 デレク・ヴァンリント編集
テリー・ローリングス
ピーター・ウェザリー
デヴィッド・クロウザー(ディレクターズ・カット版)製作会社 ブランディワイン・プロダクションズ
配給 20世紀フォックス公開
アメリカ合衆国 1979年5月25日
日本 1979年7月21日上映時間
117分(劇場公開版)
116分(ディレクターズ・カット版)製作国 イギリス アメリカ合衆国
製作費 $11,000,000
興行収入 $104,931,801配給収入14億5000万円 日本
■キャスト
アーサー・ダラス トム・スケリット
エレン・リプリー シガニー・ウィーバー
ジョーン・ランバート ヴェロニカ・カートライト
サミュエル・ブレット ハリー・ディーン・スタントン
ギルバート・ケイン ジョン・ハート
アッシュ イアン・ホルム
デニス・パーカー ヤフェット・コットー
マザー ヘレン・ホートン(声)