お薦め名画「ダーティハリー」
お薦め名画「ダーティハリー」
映画銀幕パークのジョージ松田です。
今回の御薦め名画は
ダーティハリー
です。
今でこそ、あぶない刑事とか西部警察
など、正義なんですが・・・
グレーのブラックよりと言うか・・・
部分的には、ブラックな刑事や警察モノや
キャラクターの大元の元祖と言うべき作品で
このダーティハリーが無ければ
日本や世界の刑事・警察、スパイや探偵
モノが、良い子ちゃんだらけだったかも
しれないと言える基軸で、起点の作品を
当時の様子も交えて書いてみます。
■44マグナム
まず、御存知の方も居ると思いますが
ダーティと言うのは、直訳すると
汚い
というような意味ですが、この作品的には
裏とか、表…標準・基本的な捜査では無いと言うような意味です。
44マグナム (フォーティーフォーマグナム)と
言うのも、当時は、ヨンヨンマグナム
と言っていましたが、この作品から
広まり、あまり銃に興味が無い方でも知るキッカケになった作品です。
ですが・・・けっこう44マグナムを
長いリボルバー銃だと思っている人も
日本人には、、とくに多くいますけども
弾の事です。
44マグナムは、延長したスペシャル弾の
薬莢で、より高い速度、高い圧力の
貫通力の高い弾頭で、北アメリカの
獲物を何でも狩ることが出来る威力が
ある一方で、発射時の大きな反動が出るので
片手で撃つ事が難しく、素早いアクション
にも向かないので、刑事などは所持する
事は・・・まず無いんですが(^^:
クリント・イーストウッド演じる
ハリー・キャラハン刑事は、 S&W M29と言う
本来狩猟用に開発されたものに、44マグナム弾
(直径11.2mm)を装填して活躍する様子を
描きキャラを引き立たせています。
ですが、44マグナムが本作品の中で
突進する強盗の車に発砲し停止させるシーンが
誤解され、クルマが停まったり・・・
後々の表現としては、44マグナムで撃つと
クルマが爆発したりしますが・・・
運転手が死亡し車が停車しているだけです。
そんな、もの凄い威力は・・・
もうバズーカーです(^^:
寧ろ、この作品ではリボルバーの
ダブルアクションを利用した
トリックを仕掛けてるシーンで
意図的に不発を起こしているのですが
DVD版にした時のスタッフが
これをミスだと勘違いし、銃声の数を
増やしてしまうミスをしてしまう程
リアルに再現しているのですが…
驚きからの誇張が止まらず
映画や漫画、アニメなどの演出としては
大型拳銃で、クルマやエンジンを破壊して
しまう、誇張したオーバーアクションの
表現に繋がっていますが・・・
それらは、全て、この作品のシーンからの誤解が生んだ描写です。
■ダーティー・ヒーロー
ヒーローは、クリンで正しいのが
元々のカラ―です。
ダーティー・ヒーローなんて言う
存在自体を、まだ映画などの映像作品が
受け入れるベースが無く
ダーティーなヤツは、ヒールでしか居ませんでした。
ですが、犯人に向かって銃を突きつけ
弾丸が残っているかを当てさせるなど
命がけの裁きを、自分で決めさせる
ような行為をする、刑事を本作で
クリント・イーストウッドが、見事に
演じた事で、このブラックに限りなく近い
グレーゾーンのヒーロー像が誕生します。
難しい綱渡りで、ほんの少しの表情や
アクションで、大批判を浴びてたかも
しれない、綱渡りのような
ヒーローの誕生でした。
当初はフランク・シナトラや
ジョン・ウェイン
スティーブ・マックイーン
ポール・ニューマンが、予定されて
いましたが・・・
やはり、ニヒルな笑みと睨みを
効かせられるクリント・イーストウッド
でなければ、ダーティー・ヒーローは
渡り切る事が出来ずに、無視されるか?
批判されるかで終わっていたと思います。
それは、良い意味?で誤解も生み
この作品の中で、ハリー刑事が
大型拳銃を振り回し突きつけ
カーチェイスシーンで自在に
大型の銃を振り回すハリー刑事の姿は
日本のアニメや漫画でも、大きな武器や
刀などを振り回すアクションに受け継がれ
バットマンなども、愉快な子供向けな
面を排除したダーティーなヒーローに変って行きますし
警察のような組織の描写にも、多大な影響を与えています。
007などのスパイモノでも、スマートに
かたずける描写から、目には目をのやり方
だったり、時間などを理由にダーティな
捜査をする描写が増えて行きます。
■現実の正義
この作品が製作~される70年くらいには
愉快犯などと言う、聴いた事が無い
種類の事件や、無差別殺人などと言う
どう考えていいのか?
多くの人が戸惑う事件が、現実に起き
初めていました。
犯人が、警察やマスコミを挑発したり
巻き込んで、展開する劇場型犯罪と言う
シナリオを、犯人側が書く新たな犯人像が
出現し、凶悪犯が巧妙なシナリオで
無罪放免になってしまうなどの
法律や、マスコミなどの規制などが
追いついていない時期でした。
そこに、B級映画監督とレッテルを貼られた
ドン・シーゲル監督と
テレビ西部劇ローハイドなどのイタリアの
低予算映画、マカロニ・ウェスタンと呼ばれ
るような作品の役者と言われて居た
クリント・イーストウッドが、
この現実の悪に、追いついていない社会の
溝を埋める、痛快なダーティー・ヒーローを
産み出した事で、現実とリンクして
特に、アメリカでは大歓迎され
ドン・シーゲル監督は、その後も1970年代の
ハリウッド映画のアクション映画は
ドン・シーゲル作品を、参考・モチーフに
する程になります。
クリント・イーストウッドも、勿論
この作品で世界的なスターの仲間入りをし
シリーズ化して行く他、多くのアクション作
に出演し、監督としても一流の監督として
しられるようになります。
■まとめ
この映画がアメリカで公開された
1971年12月23日の年末には、日本では
大きな映画会社である、大映が倒産しています。
また、グアム島(当時はガム島)で
元日本陸軍兵士横井庄一さんが発見され
大きなニュースになり、連日テレビや新聞が
報道し続けました。
日本公開の直前までは、札幌オリンピックが
2月13日まで開催されていた時期で
街中には、札幌五輪の唄が流れ
旗などが商店街に、揺れていた頃で
まだ、アメリカ程は酷い事件は少なく
話題作でしたが、それ程大きな反響は
公開当時は無く、パート2や3の時の方が
話題性が大きく在った気がします。
今のダーティな刑事モノやヒーローに
慣れた映画ファンが見ると、当時の驚きは無いかもしれませんが
それでも、クリント・イーストウッドの
表情やアクション、台詞などから
滲み出る、元祖ダーティヒーローの様は
一見の価値があると思いますので
刑事モノやアクションが好きで
まだ未見の方は是非見てみてください。
![]() 時間 1 時間 42 分 ASIN : B003GQSXLI 詳しく見る。 |
■作品データ
監督 ドン・シーゲル
脚本
ハリー・ジュリアン・フィンク
R・M・フィンク
ディーン・リーズナー原案
ハリー・ジュリアン・フィンク
R・M・フィンク製作 ドン・シーゲル
製作総指揮 ロバート・デイリー音楽 ラロ・シフリン
撮影 ブルース・サーティース
編集 カール・パインジター
配給 ワーナー・ブラザース公開
アメリカ合衆国 1971年12月23日
日本 1972年2月26日上映時間102分
製作国 アメリカ合衆国興行収入 アメリカ合衆国カナダ $35,976,000
■キャスト
ハリー・キャラハン刑事 クリント・イーストウッド
アル・ブレスラー警部補 ハリー・ガーディノ
スコルピオ(サソリ) アンディ・ロビンソン (アンドリュー・ロビンソン)
チコ・ゴンザレス刑事 レニ・サントーニフランク・ディジョルジョ刑事 ジョン・ミッチャム
マッケイ本部長 ジョン・ラーチ
市長 ジョン・ヴァーノン
ラッセル夫人 メイ・マーサー
ノーマ リン・エジングトン
スクールバス運転手 ルース・コバート
ジャフィー ウッドロー・パーフリー
シド・クラインマン モーリス・アージェント
ロスコ ジョセフ・ソマー
自殺志願者 ビル・コウチ
殴り屋 ラリー・デュラン
医師 マーク・ハートセンズ
同性愛者 デビッド・ギリアム