お薦め名画「蒲田行進曲」

2021年10月8日

映画銀幕パークジョージ松田です。

今回の御薦め名画は

蒲田行進曲

です。

邦画を変えた1本で、この映画の前後で
諸々変わった事の多い、邦画史上類を
みない大ヒット作品で、松竹東映
股にかけて製作された作品を、1982年
の様子を交えて書いて見ます。

■銀ちゃん・松田優作

蒲田行進曲の「蒲田」は、1920年6月から
1936年1月15日
に存在した、松竹の撮影所
蒲田撮影所の事です。

無声映画からトーキー(音声)に変って行く
時代で、映画キネマ(シネマ)と言う事が
まだ在った頃の撮影所です。

この映画が公開される前は「蒲田」の人が
場所を説明する時は、昔、松竹の撮影所が
在ったとこです。

だったのが、蒲田行進曲の「蒲田」です。

と、言う文法的には、おかしな説明ですが
それで通じてしまう程の大ヒット映画になります。

この作品は、公開後には主役は誰か?と
聴かれると1人だけでした。

公開後は、風間杜夫、松坂慶子、平田満

誰か1人や2~3人の名前を言うようになりますが

公開前の宣伝時期は、主役は1人だけで

松坂慶子さんでした。

と、言うのも、つか劇団の舞台を見てるような
人を除いて、風間杜夫、平田満を知る人は居なかったからです。

逆に言えば、風間杜夫、平田満は、この作品で
一期に、知られるスターに変貌します。

その為に、おかしな事で…前代未聞でしたが

平田満さんは、主演男優賞も貰い、助演男優賞
この同じ作品で貰うという、珍事が起きる事になります。

つまり、公開までは主役は1人なのに
公開したら、主役は「平田満」だと思って
しまう人が、玄人の審査員にも多かったという事です。

蒲田行進曲は、作家で演出家の「つかこうへい
が、書いた戯曲(舞台台本)を、演出した演劇
元で、つかさん自身が映画の脚本を書いた映画化
作品なので、松竹作品なことから松坂慶子が決まり

銀四郎とヤスについては、なかなか決まらず
角川側の提案で松田優作に、銀四郎役を依頼
しますが、松田優作はコレを辞退しています。

結局は、つか劇団に多く出演していた風間杜夫
平田満が起用され、主役は松坂慶子でした。

2人とも、キャスティングされたの知るのは
撮影直前で、そのキャスティングを見ても
松竹の幹部は、風間杜夫も平田満も、まったく
知りませんでした。

当然、殆どの人も知らない俳優でしたが

この作品の公開後は、誰もが知るスターになります。

■東映で撮った松竹の映画

プロデューサー角川春樹は、東映社長岡田茂
東映での映画化を提案します。

ですが

「楽屋オチの話なんて誰が見るのか」と、断わり
東映での公開は無くなります。

・・・大ヒットするのですけども。

これを聞いた松竹は、前身の松竹キネマ
時代がモチーフになっている事から
角川にオファして企画、製作、宣伝すべて
角川に任す条件で、映画化権を得て映画化される事になります。

ですが、蒲田撮影所は、もう存在しないので
この松竹の映画を、東映の京都太秦撮影所
使って撮影する変った製作になりますけども

そんな大人の事情は、観客には・・・
殆ど関係無く、そういう要素から最も遠い
ひたすらに、映画を作るために奮闘する
3人の姿
を描いた快演は、観た人からの
クチコミ電光石火のごとく伝わり

上映館は連日、長蛇の列で…松竹が驚く
事態に、劇場を大きな所に交換し
上映館を増やして対応するも追いつかず
公開期間を過ぎて、上映が終了してしまいますが・・・

まだまだクチコミが止まらずに、観客から
のクレームを受けて

アンコール上映が行われる程の大ヒット
東映の社長の見切りに反して

配給収入は17億6000万円を記録します。

その上、角川映画は話題や配給収入は
凄くても、質が伴わないと言われていましたが・・・

どんな莫大な宣伝費よりも、クチコミ
凄さを映画ファンが知り、本当に面白い
映画
邦画でも、これだけ人が入るだと
映画関係者は通関した1本

この蒲田行進曲は、総なめとか満場一致
と言う言葉が、コレほど合う作品は
殆ど知りませんで・・・

第6回日本アカデミー賞
最優秀作品賞、
最優秀監督賞
最優秀脚本賞
最優秀主演男優賞(平田満)
最優秀主演女優賞
最優秀助演男優賞(風間杜夫)
最優秀音楽賞
新人俳優賞(平田満)

第56回キネマ旬報
日本映画ベスト・テン1位
読者選出日本映画ベスト・テン1位
日本映画監督賞
脚本賞
主演女優賞助演男優賞(平田満)
読者選出日本映画監督賞

第37回毎日映画コンクール
日本映画大賞
監督賞
女優演技賞
美術賞、
日本映画ファン賞

第25回ブルーリボン賞
作品賞
監督賞

第7回報知映画賞
作品賞
主演男優賞(平田満)

第4回ヨコハマ映画祭
日本映画ベスト10・第2位
助演男優賞(平田満)

日本アカデミー賞他、この年の映画の賞や
映画誌は、洋画も押しのける勢いで
蒲田行進曲1色に染まります。

そして、その光景に誰も異論をとなえない
程の痛快娯楽大作で、右に出る作品
まったくありませんでした。

■最大の見せ場・階段落ち

つか劇団の芝居は、私も数十幕見て居ますが
1本でも見てる方は解ると思いますけども

基本的に、セットや衣装と言うモノがありません。

まったく何もないのもありますが、厳密には
少しは何か置いてある場合や、抽象的な背景
のような物がある事はありますけども

無い。と、言い切れるくらい
セットや衣装には、頼らない演出と芝居になっています。

なので、この映画のクライマックス
階段のセットは、舞台には物理的には在りませんでした。

観客が芝居から、凄い階段で、危険な事を
想像して見るのが舞台でしたけども

映画は、この階段落ちの大階段がセットとして
東映京都スタジオに再現されています。

高さ約8メートル35段の大階段セット
8メートルは、普通に落ちたら・・・
本当にが危ない高さです。

このスタントシーンも、平田満自身がやる予定で
他のシーンを撮って居るので、その命がけ
ヤスの姿が観客の胸を打つ効果があったかと
思いますが、流石にシャレにならない高さ
角度なので、深作監督が上の数段は転がってもらい
停めて、大半の階段落ちは本当のスタントマン
JAC所属の猿渡幸太郎が行う事にしますが

それでも階段のへりにゴムをはり、ウエットスーツ
を着て落ちていますけども、やはりアナログ
時代なので、生の演技の凄いスタントは充分に
観客は引き込まれ、まさに白昼の夢の再現に酔う事が出来ます。

■まとめ

1982年の公開1月前の9月22日角川書店から
「ザテレビジョン」創刊され、
10月1日にソニーが世界初のCDプレーヤー
発売し話題になりますけども・・・

当然、まだこの時代の主流はレコードですが
この蒲田行進曲を見て映画館を出たら・・・
しばらくは、この主題歌「蒲田行進曲」が
頭から離れずリピートされます♪

元々は、親父とその子1929年と言う映画の
主題歌でしたので、実際にはカバー曲として
松坂慶子・風間杜夫・平田満の3人が唄い
日本コロムビアからシングルレコードと発売
「恋人も濡れる街角」中村雅俊と共にヒットします。

蒲田行進曲メロディは、映画を見た人は
いつでも思いだす事が出来る程、インプット
される程で、現在も撮影所は無いですが
JR東日本の京浜東北線蒲田駅での発車メロディ
としてこの曲が使用されています。

未見の方は勿論、当時見たと言う方も
3人の若い「主役」が、体当たりで演技している
姿を、もう1度、蒲田行進曲の音楽と共に見てみてください。

蒲田行進曲 [Blu-ray]
松竹ブルーレイ・コレクション
時間 : 1 時間 58 分
詳しく見る。

■作品データ

監督 深作欣二
脚本 つかこうへい

製作 角川春樹

音楽 甲斐正人

主題歌 オープニング「蒲田行進曲」
松坂慶子・風間杜夫・平田満

エンディング
中村雅俊「恋人も濡れる街角」

撮影 北坂清
編集 市田勇

製作会社 松竹/角川春樹事務所
配給 松竹

公開 日本 1982年10月9日

上映時間 109分

製作国 日本

配給収入17億6300万円

■キャスト

小夏 松坂慶子

銀四郎 風間杜夫

ヤス 平田満

朋子 高見知佳

監督 蟹江敬三

助監督 清水昭博

橘 原田大二郎

山田 汐路章

舎弟 トメ 榎木兵衛

舎弟 勇二 萩原流行

舎弟 マコト酒井敏也

大部屋A 石丸謙二郎

千葉真一 千葉真一

志穂美悦子 志穂美悦子

真田広之 真田広之