キスシーンの異次元の空気【9】
映画銀幕パークのジョージ松田です。
スタッフ的には、当たり前になっている
ような事でも、映画ファンの方との
やりとりで、驚かれるたり、疑問・に思われるような
現場でのシチューエーション
を交えて、現場の様子から映画作りの
メイキングをピンポイントで書いてみます。
今回は
「キスシーンの異次元の空気」です。
■キスシーンはテストから?
時々聞かれるのが
「キスシーンはテストからするの?」という質問です。
一般的には、疑問に思う事で
興味や関心があることなんでしょうね。
結論から言うと基本的には、しません(^^:
略90%はしません。
では、残り10%は何でするの?と
思われると思いますが・・・2つ理由があります。
1つは、技術的な事で、特異な
ケースのキスは、やってみないと
照明や撮影、録音、特殊パートがセッティング出来ない場合です。
例えば、ポッキーを左右から
ポリ、ポリ、食べて、チューして
などという演出だと、リズミカル
な音が大事だったりします。
キスしたら、電車のドアが閉まる
とか、偶然の事故のようなキス
なども難しいケースで、テストからする事があります。
また、動物とのキスなどは
毛があったり、髭とか、耳が長い
など、ライティングなどに困るからしてもらう事が多いです。
また、寝てる女性に男性がキス
したら、目を開けるなんていうのも
タイミングと、暗い中で女性の目に
ライトが欲しいとなると、テストで繰り返すこともあります。
もう1つは、役と俳優のスキルの
差がありすぎる時です。
若い男性の俳優がキスの経験が
少ないのに、役では超プレイボーイ
などの時は、テストからベテランの女優
さんなどは、意図的にしてくれる事で
本番で、ガチガチになるのを緩和してくれたりもします。
ですが、ほぼ同じようなキャリアで
特異なキスシーンでなければ・・・ふつうはしません。
本番だけです。
■瞳の数と空気
よく、きれいな女優さんとキスできて
いいな~、とか
イケメンの男優さんにキスして貰って
いいな~、なんて声も聴きますが・・・
キスシーンというのは、やはり少し
特異な芝居なので、ロケでも屋内
やスタジオでも、普通は体感しない
異次元な空気になります。
観客のみなさんは、殆どキスシーンは
2人の場面としてみると思います。
結婚式などのようなキスとか
酔っぱらってするふざけたキス以外
真面目な男女の恋愛を描く大事な
場面であることが多いからです。
スクリーンに映っている瞳は
2人の目の4つです。
ですが、現場というのは、監督
助監督、カメラマン、録音などの
スタッフ人数を、減らす場合もありますが…
ロケなどでは、減らすことも
出来ず、下手すると100~200の瞳
が、2人の芝居に集中して注がれています。
そんな中で、キスする事は・・・
普通は・・・ありません(^^:
その特異な空気の中で、役の
感情をつくり、前後のセリフや
動きを行うのですから・・・
イケメンの男優さんにキスして貰って
いいな~
なんて、感じは現場にはありません。
逆に映画では1回でも、現場では何十回もする事もあります。
それはピンタするシーンも同じで…仕事だからです(^^:
スタッフも、技術的なNGを出さない
ように、最大限注意するシーンではある独特の空気感があるのは確かです。
■キッカケは第三の目
キスには、50:50の場合と
女性が積極的な場合と、その
逆のパターンの3つが、ザックリいえばあります。
壁ドン、などからのキスとか
女性が御褒美や御礼にするキス
など、意味は別にしても・・・
タイミングや距離感などが3つとも異なります。
ただ、このタイミング(見た目)と
言うのは、演じてる2人には
解りにくいもので・・・
タイミングを、フレームの外から補助
する場合もあります。
キスシーンは、音楽オンリーで
現場の音を使わないシーンなどは
監督が、メガホンでいう事もあったり
上半身から上しか映らない場合は
助監督のチーフなどが、男優の足を
ポンとタッチするなど、観客が見て
なんか、今のキス・・・ぎこちなかったね?
とか、なんか綺麗じゃないと思われない
ように、絶妙なタイミングで、2人が
キスをすることで、映画が感動的に
なったり、2人を応援したくなる・・・
微妙なタイミングで、大事な「間」は映画にはとても重要なポイントです。
それには、第三の目が、フレームの外で働いていることがあります。
だから、現実のキスが映画やドラマ
のように、いかなくて当然なんです(^^:
なので、映画では素敵に見える
キスシーンというのも、現場が団結して
撮影した他のシーンと、ある意味かわりありません。
だから、映画やドラマを観てる時は
良い意味で、だまされて見て観てください。
おしまい
橋本環奈 (出演) 片寄涼太 (出演) ASIN : B08616PZ74 詳しく見る。 |