レンズと目の違いで見る映画
映画銀幕パークのジョージ・松田です。
今回は「レンズと目の違いで見る映画」
についてです。
この写真の黒い手帳は映画テレビ技術手帳というもので
カメラマンや撮影の技術者が持って居て、レンズの視角
視野、シャッター開角、露出などなど専門的な事が
書かれた、手帳と言うよりも辞書のような本で
現場でも調べるのに使うモノです。
ただ、内容を映画ファンが見ても…睡眠効果し
か無いので(^^: 専門用語ではなく解りやすく
レンズと、人間の目の違いから見る面白さを解説してみたいと思います。
映画の感想を聴くと、それはレンズだからとか
それは目の印象だね。などと思う事があり
カメラには、凄く人間の目に似た部分があり
また、まったく違う部分があるので
けっこう「その違い」が、映画を面白く(感じる)していたりします。
■50mmが標準レンズ?
少しカメラを知ってる方は、聞いた事が
あると思いますが、昔は50mmレンズが標準と言われていました。
これは、35mmフィルムが「標準」だった頃の話です。
つまり35mmフイルムでは焦点距離が50mmだからなんです。
フイルムの対角サイズが43mmなので
それに近いのが50mmだから言われた事です。
勿論、今でも35mmフィルムを使うなら
「約」ですが、50mmが標準レンズと言えます。
勘違いしやすいのが、人間の目のように
映るレンズと言うような意味の解釈を
している方も居ますが、これは間違いです。
50mmが標準と言われる、もう1つの要因は
実は、値段です(^^:
カメラはレンズが無いと映りませんが
広角レンズ50mmより小さい35mmなども
望遠レンズ50mmより大きい数値の85~200mmは値段が高いんですね。
なので、カメラに1つ着けて売る事が
レンズ=標準レンズと言われる原因になりました。
唯一、間違いでもなく古くも無いのは
画角を考える時の基準や、目安としては
今でも、残っていて~今後も続くのでは無いかと思います。
■集中力とレンズ
人間の目には、実は機械化しにくい
「集中力」と言う機能があります。
個人的には、コレが映画を面白くして
居ると考えています。
1本の映画を見て、評論家や映画監督
カメラマン、画家などは、普通の人よりは
画面を、いろいろ覚えてると思いますが
それは画面をいろいろな角度(視点的な意味)で見てるからです。
普通に映画を見て、全部のシーンの
画面を覚えている人は…まず居ません。
極端な話、つまらない映画で無くても
眠くなったりする場面(時間)や
ジュースやポップコーンをクチに
する場面(時間)は、集中して
画面を見てる%が下がっているはずです。
この下がった%時の人の目の視野は
35mmのレンズに近くなっています。
例えば好きな俳優が出て無いシーンや
アクション映画で、アクション場面
では無いシーンでは、人間の目は
広~~~~~く、スクリーン全体を見て
特に自分が集中する変化が無いと
ジュースやポップコーンをクチにして一息いれます。
でも、それは次のシーンに備えて
いる状態なので、つまらないのでは無く
ワクワク、期待している状態で
ジェットコースターなら、平らな所や
登りに入って、カタカタカタと
ゆっくり降る準備をしている感じです。
そういうシーンも、映画の楽しみ
なので、そういうシーンに
クローズアップを多用したり
ズームや早いパンなど激しい画は使いません。
ざっくり言えば、カメラマンは
そういうシーンは50~35mmのレンズを
台本を読んだだけで、スタンバイするくらいです。
逆に、クライマックスには
その逆に、ズームや移動撮影を
使ったり、レンズの角度も多様します。
スパイ映画なら、空撮やライフルの銃口の
アップ、クルマのシフトチェンジのアップ
から、クルマが崖に落ちる望遠ロングなど
あらゆるレンズで、たたみかけ楽しませます。
恋愛映画でも、彼女の元に急ぐ男優の
走りをクルマやバイクから、急ぐ様を
移動撮影したり、1人で待つヒロインを
クレーンで表情から、孤独な場所を1カットで
見せたり、2人が出会い抱き合うのを
サークルレールで360度撮影したり
観客が望むラストを盛り上げる撮影用の
レンズを多種多様し見せて行きます。
勿論、脚本や俳優さんの芝居、演出
照明効果もありますが・・・
画面に魅了されてくれたらカメラマンには何よりの喜びです☆
レンズ使用のメリハリが、上手く
面白く使うので、有名なのが
スティ―ブン・スピルバーグで
クライマックスに向かうにしたがい
ピアノソロから、フルオーケストラを
使うくらいに、多種多様なカットで
観客を楽しませる名人です。
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■スクリーンサイズとの関係
デジカメやスマホのカメラでも
液晶で、友人や家族に見せたり。
プリントして見る事もあると思います。
フィルムでなくても、ハガキサイズに
して郵便で送るとか、買ったポストカード
プリントした写真を壁に飾って「見る」事もあると思います。
ですが、やはりプロが撮った写真が
ポストカードで売ってたり
年末にカレンダーなどで見ても・・・
何か自分が撮ったのと「違うもの」が在ると感じるかと思います。
コレも、一言で言えばレンズと目の知識がプロにはあるからです。
サービスサイズ(普通の写真)で
持って見るくらいの距離30~40cmくらいなら
プロは135mmレンズを使う事が多いです。
壁にかけるカレンダーなどは135mm~200mm
で、撮影すると1m~1.5m離れて見て
人間の目で見た感じに近くなるので
景色とか鉄道、クルマ、建物などの
カレンダーは、135mm~200mmくらいの
レンズでプロは撮るので、見る距離(使用)
用途にマッチした「感覚」を産み出す事が出来るんです。
勿論、意図的に外すドアップや超ロングも
ありますが、それはスタンダードを
知ってるから外せる技です。
アマチュアの方は、この見る距離を
考えずに、レンズを選ぶ(選ばない)
ので、プロと違ってしまいます。
此れと同じで、スクリーンで見るのが
好きと言う映画ファンは、感覚的に
この距離にシックリきていて、テレビや
スマホで見る映画に違和感を感じていると思います。
その感覚は正しいです。
テレビドラマと映画は、広い画や
予算以外に、実はレンズ選択も
変えているで、テレビドラマを
そのままスクリーンで見ても・・・
正しい感覚の方は、なんか違うな~?
と、感じるはずです。
それは、人間の目はサイズと距離を
ある意味、自動で選択しますが
レンズは、プロ的な知識で見る環境の
距離を考慮して、レンズを選択しないと
「距離」的な違和感を発生させてしまいます。
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■レンズと目の違い
集中力と距離について解説しましたが
もう少し「違い」についてシンプルに書くと
人間の目は中心部が視力が高く、周りは視力が低い。
と、言う事になります。
視力検査で「C」を見て、切れてる方を
言ったりしますけども、それを見てる間は
その他の周辺の視力は落ちて居て~見て無い=覚えてません。
視力検査などで集中している中央は
人の目は0.5度の視野角しかなかったりします。
その場合1度も外を見て無いという事です。
0.5度の焦点距離のレンズは600~2700mmです。
超~~~ウルトラ望遠レンズです。
こんなレンズは映画撮影に…まず使いません。
だけど、人はスクリーンを見る時に
好きな俳優さんの顔だったり、話の鍵
になるような「モノ」に集中する時は
この超望遠レンズで集中して見ています。
コレが映画の面白さを産みます。
大好きな女優さんの目やクチビル
男優さんの筋肉、可愛い動物の目
銃の引き金や、刀の動向に人は集中して
とんでもない望遠(視野角)で見ます。
動きになると、またレンズは単眼で
人は左右の2眼なので、横には強く
上下の視角に弱いのが人間の目なので
上下の重要な動きと言うのや
早い動きも、あまり映画では使いません。
遊園地などでは、逆にコレを上手く
使ったアトラクションも在りますが
映画好きな人や、カメラマンには
この上下の動きのアトラクションは
苦手と言う方も多いです(^^:
また映画館に行かなくても、大画面の
テレビを近くで見れば大画面と同じ
などと言う方も居ますが・・・
これも、理屈(へ理屈)は解りますが
精巧なミニカーを写真(単眼撮影)で見ると
本物かと思った~!と、言うのと同じなんです。
単眼のレンズで見ると、その理屈は
かなり「あり」な理屈ですが
人間の目は、2眼なので立体的に
モノや奥行を感じる力があります。
なので、ミニカーは2眼で見ると
やはり小さいクルマでしかありません。
友人が近ずいて来ても「巨人」が
来た!とは思わないのも大別したら同じです。
こういう「感じ方」を、逆算して
いろいろなサイズの飛行機や軍艦
建物を制作して、レンズを駆使して
トリック撮影をする名手が
ゴジラの円谷英二特技監督です。
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つまり映画館のスクリーンの
距離で、0.5度程目(や首)を
動かして2眼で見る事が、映画を見る
面白さを強くするので、近くでテレビを
見ても、映画館と同じには感じません。
なにより、見て見れば…違うな。。。
と、感じるはずです(^^:
■もっとも大きな違い
最後に、レンズは露出も含め目と似た機能を
持って居るのは確かで、目の替わりになる
部分や、1つの特性では目よりも優秀な場合もあります。
ですが、もっとも違うのは
目には「脳」が接続されている事です。
つまり、人間の目(レンズ)は
感じる事が出来るんですね。
極端な場合は、ホラー映画の
怖い場面では目をつぶります。
それも、また楽しい見方です。
大好きな場面では、乗り出し
集中したり、美味しそうな食べ物が
映ればヨダレが出たり、お腹が減ったりもします(^^:
レンズは、どんな綺麗な風景も
汚いモノも同じように捕らえます。
なので、この同じように撮影する
性能を上手く使って、見ている人の目の
距離や集中力に合わせたレンズでの画で
構成されたものが、映画の画なので
映画監督は、自分の好みや作品内容に
マッチしたカメラマンを選ぶように
実は、映画ファンもリメイク作品など
同じ作品で比べると、好きなレンズを
選択をするカメラマンが、見つかったりもします。
それには、楽しんで集中したり
画を満喫して、少しレンズを意識して
自身の「目」で見ると、映画の見方が少し変ってくはずです。