お薦め名画「ロッキー」
映画銀幕パークのジョージ松田です。
今回の御薦め名画は「ロッキー」です。
映画ファンでなくても、世界の多くの人が
シルヴェスター・スタローン
と、言う名前を知らない人は少なく
ロッキーやシルヴェスター・スタローン
の出演作を見て無くても知ってる人が多い程
有名な俳優で、監督です。
ですが、このロッキーの公開時に
シルヴェスター・スタローンを
知ってる人なんて居ませんでした。
■どん底からのアメリカンドリーム
54回のオーディションに落ちた売れない
俳優で、ポルノ映画やボディーガード
などをするなど、本当に地をはうような
その日暮らしの極貧生活の中で
「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー」
の試合をテレビで見たスタローンは
自身で脚本を書いて売り込み、主役として
カメラの前に立つ事になり、映画を大ヒットさせます。
それには、様々に要素がありました…
■フェイクエピソードを超えた奇跡
スタローンが売り込んだ脚本は
7万5千ドルという当時破格の値をつけるも
主演はポール・ニューマンやアル・パチーノ
ロバート・レッドフォード有名スターを
起用する条件に対し、自分が主演を兼任することに
拘り、脚本料は36万ドルまで高騰するも
主演の為に2万ドルで作り上げたと言う
メイキングのフェイクエピソードを
製作会社が、でっち上げると言う
アメリカンドリームを演出しますが…
そんな必要は、まったく無く
スタローンの人生は、そのまま
誰が見ても超アメリカンドリーム
なので、こんなフェイクエピソードは必要ありませんでした。
実際のロッキーは、テレビドラ1本分
約100万ドルで契約して、交渉など
略していない、低予算のB級…C級映画として製作しています。
試合の観客役のエキストラを
仕込む資金も無くフライドチキンを
配布して、一般の人に座って居て
もらうなど、無名の俳優の低予算
映画の製作は、画面を見ても・・・
お金が掛かっているとは、今見ても言えません(^^:
■デメリットをメリットに
スタローンが、オーディションに
落ち続けた大きな理由の1つは
産まれた時に産科医のミスで顔の左に麻痺が残った事です。
今でこそ、スタローンのモノマネ
では、クチを斜めにして
「エイドリアン」と下手に叫んだり
しますが、この麻痺はハリウッドで
売れるどころか、デビューするにも大きなデメリットでした。
ですが、このロッキー・バルボア
と言うボクサー役は、綺麗な
英語が喋れたり、美しい女優と鼻を
突き合わせるイケメン俳優には出来ない役で
むしろ、ちょと何言ってるのか?
集中しないと解らないくらいだったり
台詞は少なく、体や汗で表現し
長々と感動を産む台詞を話すよりも
「エイドリアン」と感情をこめて
叫ぶだけ方が、ずっと心の奥まで
浸透する役であり、ストーリーだったので
もし、スタローンがデメリットの
無い平凡な無名俳優だけだとしたら
このロッキーのヒットは無かったと思います。
■ロッキーの評判
ロッキーは、当然無名の俳優が
演じて、書いた作品なので
有名スターや監督の映画と同じには扱われません。
少ない劇場で上映されたロッキーは
SNSなど無く、宣伝費も無く・・・
前評判も酷評どころか、評判も無いような映画だったので
ただのクチコミだけで
少しずいつ、少しずつ評判になり
劇場が増えていき、この映画の内容と
映画自体がシンクロしだして
低予算映画なんですが、そのパンチが徐々に効いてきます。
アメリカは、当時ベトナム戦争後で
映画も、暗い内容やラストが多く
誰もが、こんな無名のボクサーが
立ち向かうアメリカン・ドリーム
を待っていたところに、登場した
1人のボクサーの映画は、勢いが
止まらず、A級映画館でも上映されると
アメリカで約1億で作った映画が
12億以上を稼ぐ大ヒットになり
当時のハリウッドの暗い映画を、この1本の作品が吹き飛ばしてしまいます。
ロッキー、ロッキーシリーズを
アメリカの映画館で見ると
他の映画でも、日本よりは
日本的なマナー(おとなしい)は無いのですが・・・(^^:
ロッキーシリーズは、特に凄く
試合ではスピーカーからでは無く
劇場の観客からロッキーコールが起きて
ロッキーがピンチになると
後の席からポップコーンや
紙コップがブーイングと共に飛んで来ます(^^:
ロッキーが、強烈な1発を貰うと
「NO~~~~!」と言う声が
スピーカーではなく劇場に響き渡り
前の席の太ったおばちゃんが
自分の息子が殴られたかのよういに
痛みと悔しさの表情で、後に仰け反ってきます!
ある意味、本当の3D映画のように
アメリカのロッキーを応援する
様子は、ベトナム戦争後に映画を戻してくれた
正統派のアメリカ映画としての想いがヒットの核になっています。
■半年遅れの日本公開
その勢いから、この無名俳優の
映画は日本でも半年後に上映されます。
ただ、日本には漫画でアニメの
「あしたのジョー」と言う
ボクシングの名作があるので
当初は、あまり話題になりません
でしたけども、ビル・コンティ作曲の
ロッキーのテーマの方が、ラジオなど
流れ出し、曲が先に売れるような?
少し変わった入りから、無名の俳優の
ボクシング映画を見に行くと、その
テーマ曲が、それまでの映画よりも効果的に
使われた作品だったので、大ヒットに繋がります。
■世界が驚いたロッキーの武器
もう1つ、このロッキーでは予算の無い
中で、音楽と共に予算を使っているのがカメラでした。
ロッキーがロードワークに走り出した
次のカットで、左右に汚い店舗が
続く中を走る姿を、正面から撮った
カットは、当時は斬新でカメラマンや
映画関係者、目の肥えた映画ファンは
前のめりになって驚いたカットでした!
続く、ロッキーが美術館前の階段を
かけ上がるシーンでは、驚きでしか
ありませんでした。
それまでの映画は、移動撮影はレールか
ドリー(タイヤ)、クレーンが主でしたが
このシーンは、ステディカムと言う
揺れずに、地面の形状に関係無く
カメラごと移動しながら撮影できるカメラを使用しています。
なので、スタローンの走る速度で
後に下がり続けながらのカットが
あまりに長い事に驚き!
ロッキーが階段を上がって来る
のを、カメラが待ち構えていたと
思ったら、カメラも一緒に最上段まで
上がって行く映像が映し出されます。
このステディカムと言う武器の
効果を最大限に使っているのは
この街中を走るロッキーに感情移入するにも充分効果的で
一緒に階段を駆け上がるような錯覚は
この映画をヒットに導いた映像のマジックです。
逆に言えばアヴィルドセン監督と
カメラのジェームズ・グレイブは
ステディカムを最大限に活かす演出と画を作り出しています。
普通に考えたらロードワークに
人が多い左右に店舗がある商店街を
走る必要は無く、美術館の階段を
かけ上がる事も、最上段で両手を
上げて叫ぶ必用も、本当のボクサーには必要無いんです。(^^:
ですが、
肉を撃ったりもアイディアですが
美術館の階段を使ったステディカムの
シーンは、この作品とスタローンの
人生そのものなシーンになっている事で
シリーズを通して象徴的なシーンな為に
現実のフィラデルフィア美術館前の
階段上には、ロッキーが両手を上げた像が立ってしまった程です。
誰も知らない、俳優が演じた役シーンの像です。
■まとめ
ロッキーの1作目は、後の
2作目は…やや演出がチープですが
3や4などは、予算もスタローンの
演技やアクション、肉体も研ぎ澄まされずっと豪華です。
1作目のロッキーは、やはり
地味で予算の無い、ハリウッド映画?
と疑いたくなるようなシーンも正直あります。
ですが、逆に1作目にしか無い
泥くさい部分や、スタローンの
必死な姿がフィルムに焼き付いていて
後々の続編や、誰もが知るスタローンの
映画では見れない表情や動きを見る事が出来ます。
ステディカムで撮った商店街の
シーンで、オレンジをスタローンに
向って投げて、体を向け受けて走りだす場面がありますが
普通は演出ですけども、少人数の
スタッフと大きなカメラでは無く
手持ちのステディカムだったので
本物のボクサーをテレビが取材しているのだと勘違いして
応援の為に、投げたオレンジで
スタローンは、アドリブで演じ返し
そのまま使われている場面です。
これは、スタローンが脚本を書いていて
ロッキーが、綺麗とは言えない
商店街を走る理由にもなり
貧しいボクサーと、当時貧しい
スタローンを、反射的に結びつけしまう才能です。
このスタローンの才能は
後々の映画の動きや、アクションを
見ても、コレは計算や演出じゃ
出来ないなと思わせる場面が出てくるので解ります。
イイ意味で、台詞も演技も上手く
無くて、メチャイケメンでも無い
無名の俳優が、カッコよく無いのに
応援したくなり、カッコよくも見えてくる
感覚を、未見の方は是非味わってみてください。
![]() JAN: 4988142820129 時間: 120 分 詳しく見る。 |
■作品データ
監督 ジョン・G・アヴィルドセン
脚本 シルヴェスター・スタローン
製作 アーウィン・ウィンクラー
ロバート・チャートフ
製作総指揮 ジーン・カークウッド音楽 ビル・コンティ
撮影 ジェームズ・グレイブ
編集 リチャード・ハルシー
スコット・コンラッド
配給 ユナイテッド・アーティスツ公開
アメリカ合衆国 1976年11月21日
日本 1977年4月16日上映時間 119分
製作国 アメリカ合衆国製作費 110万$
興行収入 アメリカ合衆国カナダ$117,235,147 $225,000,000
配給収入 12億1600万円■キャスト
ロッキー・バルボア シルヴェスター・スタローン
エイドリアン タリア・シャイア
ポーリー バート・ヤング
ミッキー バージェス・メレディス
アポロ・クリード カール・ウェザース
デューク トニー・バートン